「風の中を」(4)

・・・・・・空が高く

この空のように、いつまでもいつまでも続くと思った青春時代

その時はそう思った・・・・・・でも違っていた

何もかもが変っていく・・・・・・そんなのイヤだ・・・

そう思っても・・・・・・変っていく

人の心さえも絶対はない

親友達も今どこで何をしているのだろう。



走り出したのは良いのですが、今が一番暑い時間帯になっていた

(わぁ、暑い・・・・・・腕がヒリヒリするよ、でも風が心地良いなぁー、風景もサイコーだし
自分自信の体で直接夏を感じられるのがバイクの良い所よね)

私は自己満足に浸りながら最上川に向かってひた走り続けている

毎年最上川で鮎の塩焼きを食べるのがとても楽しみです

頭から、バリバリ食べてしまうんです、あぁ・・よだれが出て来そう

食いしん坊な私は、そんなことも考えながらバイクを飛ばした

でも今年の夏は特に暑い・・・(だめだ、休憩しよう・・・・・って、まだ30分ぐらい
しか走ってないなぁ・・・・・・・どうしようかなぁ、もう少し走ろうかな・・・・
・・・・・・・・やっぱり休もう)

私は小さな駄菓子屋さんの軒先にバイクを滑りこませた

「あつーいっ」口から言葉が出た

私はヘルメットを取り長い髪の毛を振りほどいた

それを見ていた店のおばさんが「あれーっ、私はてっきり男の子かと思ったら
めんこい女の子だよ、」

(・・・・・・・・あはははは、女の子ですか)私は心の中で思った

「こんにちは、今日は特別暑いですね」私は素直な感想を言った

おばさんは「いんや、まだそう暑くねいべさ、まだまだこれからが暑くなるんだ」

「えっ、そうなんですか?・・まだまだ暑くなるんですか?」

「そうだよ、真夏の暑さはこんなもんじゃねぇ」

(まいったなぁ、こんなもんじゃないんだ)

「そうなんだ、私は今日は特別暑いのかと思いました、おばさんアイスある?」

「おお、奥にあるよ、入っておいで」

私はおばさんの後につづいて店に入った

ビックリしたのは店の中に入ったとたん涼しくなったことだ

店は引き戸が開けっぱなしで冷房などかかっていない

「おばさん、店の中は涼しんだね、」

「そうだよ、昔の作りで壁などは、しっくい、だからね」
(土をねって竹で編んだ骨組みに塗りつけた物だ)

「そうなんだ、へぇー夏でも涼しんだ、昔の人の知恵だね」

「そうだよ、昔の人は頭が良いんだよ、ぎゃはははは」

・・・・・・・と豪快に笑った

私も「あははははは」笑った

私は店の中でアイスを買って軒先に出てきた

「これで・・・まだまだなんだ・・・・・」私はバイクの横に腰掛けアイスを食べ始めた

空は高く、日差しは強くそして・・おばさんは豪快、などと考えながらにやけてしまった

アイスを半分ぐらい食べた時に溶けたアイスが手に垂れてきた

「わぁ、もう溶けてきたよ」そう言いながら残りのアイスを全部口の中に入れた

口から出ているのはアイスの棒だけだ、

(今私間抜けな顔してるんだろうなぁ)そう思ってはまた、笑った



2年前・・・そう100キロ走ったら休憩そんなツーリングをした時は
埼玉を夜中に出て向かったのは日本三景の一つの松島だった
結構きつかった・・・・あの時はたしか松島に着いたとき雨が降っていたんだっけ
そしてラジオを聞いていて(朝方)日本海側は晴れ・・・と言っていたのを聞いて
「日本海に行こう!」そう言った・・・・・誰かが・・私か?思い出せない
私達は日本海に向かう、日本を横に横断した
日本海についたのは11時頃だと思う
誰かが「私達何キロ走ったと思う?」そして
バイクのメーターを見て「おぉーー」なんて感じにさわいでたっけ
そしてそこでアイスを皆でたてつづけに三本づつ食べたんだよね
(たのしかったなぁ、若かったんだなぁ)



私の前をバイクの一団が通り過ぎた
(私達もあーゆー風に見えてたんだろうな)
私はバイクの一団が私の視かいから消えるまで目で追っていた

「もう行こう、待っててね・・・」私は涙を浮かべた

ヘルメットをかぶりバイクにまたがりエンジンをかけた

なかなか走り出せなかった・・・・・・

私はそのままの状態で泣いていた・・・・「ごめんね」口をついて出た

(私はきずいてあげられなかった、わからなかった、ごめんね)

(今行くからね、待っててね・・・ごめんなさい)


つづく。



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