「風の中を、5」



空よ、貴方はいつでも私達を見つめていた

なぜ?・・・どうして?・・・それなのに・・・・・・

いつも一緒なのに・・・・・どうして?・・・・・・・

わからない・・・・・



私は走り出した、複雑な思いを胸に走り始めた

一人じゃつらいから、他のバイクの一団の後について行くことにした

方向は一緒だ国道13号線を北上

どこまでも、どこまでも、ひたすら走った

やがて真室川方面の看板が見えてきた、

真室川方面の看板が3回見えたらその交差点を左折した

ここからはほとんど車が走ってない山の間を抜け、畑の真中を抜けて

杉の木に囲まれて薄暗い道をひたすら走った

・・あの時とはちがう・・・あの時は行き先も決めず三人で気の向くまま走った

楽しかった、楽しかった・・・・




もう・・・終わりにしよう・・・・・



真室川の駅前に着いた

古ぼけた木造創りです、私はここが好き

今は思いでしか残ってないけど、私の一部でもある

ここで貴方が私にプロポーズした場所・・・・

私は嬉しくて泣いた

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


さぁ行こう、待ち合わせの場所に

私は真室川駅前からまっすぐに西の方に走り始めた

すぐに道は曲がりくねり、その道を軽快に走りぬける

30分も走ったら秋田に向かうスーパー林道の入り口に着く

スーパー林道は舗装されていない道でほとんどが自然のままの状態です
(ガードレールが無く、ほとんどが川沿いを走っている)

私は林道に入る前にバイクを止めて

林道の入り口を見つめた・・・・・・・

「行こう、貴方が待ってるから」そう言ってアクセルを開けた



舗装されていないのでスピードは出せない

ゆっくりと山間を走る、右側が山、左側が川です

やがて三人で休んだ木製の小さな橋が見えてきた

私はその橋をゆっくりと止まりそうな速度で通る・・・・

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

橋を渡り終えてまた少しスピードを上げた

速度は30キロぐらいで走った



10分も走ったら アイツが見えてきた・・・・・


アイツは道の端に立ち川の中を除いていた

私が来たことに気づきアイツはこっちを向いて軽く手を揚げた

私はバイクを止めてヘルメットを取りアイツの横に立った




私は「久しぶり・・・・」そう言った 

「おぉ、久しぶり」アイツが言った

そしてアイツは静かに言った「これで最後にしようと思うんだ」・・・

私はアイツの顔を見て「私もそう思ってました」

アイツは「そうか・・・・・・そうしよう」

私・・・・「・・・・うん」涙が出てきた・・・



七年前の事が思い出される


(風の中を3)
三人で東北を走りに行って山形の北部 それも奥深い山の中で休憩した時
小川が流れていた小さな木製の橋の横で休んでいると
貴方が騒ぎ出しました
「わぁ〜、助けてー」
騒いでる方を見ると「・・・・・・・・・」貴方に「アブ」がたかっています
そして手で払いながら走りまわってます
私ともう一人の友達は悪いけど笑ってしまいました
たかられてる貴方は「悪いけどアブがいないところまで先に行こう」そういって
バイクにまたがり先に走り始めました
笑ってた私達もすぐに後に続いてバイクを発進させました




「ごめんね、気づいてあげられなくて・・・・ごめんね」
アイツはただうなだれて川を見つめていた
「私はこれしか言ってあげられない・・・・・ごめんね」

「貴方は七年間何も言ってくれない・・・・・・・」

「でもね、もうこれで最後にしようと思うの・・・・ごめんね」



三人で東北を走りに行って山形の北部 それも奥深い山の中で休憩した時
小川が流れていた小さな木製の橋の横で休んでいると
貴方が騒ぎ出しました
「わぁ〜、助けてー」
騒いでる方を見ると「・・・・・・・・・」貴方に「アブ」がたかっています
そして手で払いながら走りまわってます
私ともう一人の友達は悪いけど笑ってしまいました
たかられてる貴方は「悪いけどアブがいないところまで先に行こう」そういって
バイクにまたがり先に走り始めました
笑ってた私達もすぐに後に続いてバイクを発進させました

そして走れど、走れど、貴方に追いつけなかった
とうとう秋田県に入ってしまいそこでバイクを止めて
「おかしいなぁ、どこ行っちゃったんだろう?」アイツは私に言った

私は「ほんとだね、でも道はこれ一本だからもっと先に行ったしか考えられないよね」
アイツは「うん、それしかないね、ほんと琴の彼は自分勝手だ!」などと言いながら笑った
私は「あはは♪、勘弁してね♪」
「琴に言われたら、なんだって許しちゃう」などとおどけて言った
そして私達は林道を走り始めた

とうとう林道を走りぬけてしまい日も沈み始めた
私達は林道の出口(入り口でもある)でバイクを止めて
近くの公衆電話で貴方の家に電話した
(この頃携帯なんてない、何かあったら連絡は貴方の家にすることになっていた)
アイツは電話をし終わって私に言った「家のほうにも連絡ないって・・・
もし連絡来たら、秋田側の林道の入り口にいるって伝えてもらうようにいっておいた」
(まったく貴方ときたら・・・・・・もう!)私は「ごめんね・・・・・これからここで待つわけね」
「そうだね、とりあえず林道の入り口にいることにしたから」

回りを見て少し離れた所に自動販売機があった、
そこまで移動してバイクと販売機の間に座りこんだ

そしてアイツといろんな事を話した
もちろん貴方と私のことも!
そうこうしてるうちに2時間が経った、アイツは「こないなぁ・・・もう一度電話してくる、
連絡あったかもしれないしね」そして電話ボックスまでアイツは歩いていった

電話ボックスからアイツが出てきた、
小走りに走ってくる
(貴方の居場所がわかったんだ)
私は「ねぇ、今どこにいるって?」
アイツは私の前に来ていきなり私を抱きしめて「奴は・・・・・死んだ」
(えぇ?なになに、なんて言ったの・・・)声にならなかった
アイツは私の体を支えたまま「奴は死んでしまった・・・・・俺達が休んだ木製の橋から
こっちに向かって5分ぐらい走った、あたりの崖から川に落ちたそうだ」

(うそ?ウソだよね!・・・・・・・・うそって言ってよ!)声にならない
アイツは私が立っていられないだろうと抱きしめたのです
私はアイツにぶら下がる感じになっていた
そしてやっと声が出た「イヤーーーーーーーーーッ!」
私はそう叫んで・・・・・・泣き叫んだ・・・・・・

それから私達は電話で聞いた病院に行った
バイクには乗れなかったので、バイクは置き去りにして
アイツが道路を走ってくる車を止めて事情を話し乗せてもらった

病院に着きなかなか中には入れなかった・・・・・・・・・
アイツに支えられながら中に入った

貴方は白い布をかぶっていた、アイツは貴方の顔を確認した
私は部屋を出て泣いた、息ができなかった



そしてアイツが警察と話しをしている


発見者は釣り人でした、
釣りをしていると上流の方から油が沢山流れてきたのでもしかして、
そう思って油が流れている上流に見に行ったそうです

その時はまだ息があったそうです
貴方を担いで崖を上るわけにもいかず、発見者は自分の車に戻り
山形県側の酒屋さんの電話を借り病院に連絡したそうです
でも戻ってきたときには貴方は、もう息をしてなかったそうです




空よ、貴方はいつでも私達を見つめていた

なぜ?・・・どうして?・・・それなのに・・・・・・

いつも一緒なのに・・・・・どうして?・・・・・・・

わからない・・・・・


なぜ、私の大切な人を連れていったの

なぜ?いつも一緒だったのに



アイツが「おい、何か言ったらどうなんだ・・・・琴がこんなに謝ってるんだ!
泣いてるんだ!苦しんでるんだ!・・・・・・頼む・・・何か言ってくれ・・・・・」


続けてアイツが「もう、許してくれるよな・・・・・俺と琴がすぐに気づいていれば
お前は死ななかったかもしれない・・・・・・・でも、気づかなかった、すまない・・・・
でも、もう許してくれ・・・・・ここに来るのも今日が最後だ、わかってくれ」

私は「ありがとう・・・今までこんな所まで付き合ってくれて・・・感謝してます」
私はアイツに頭を下げた


アイツは「別につきあいでここまで来てたわけじゃない・・・すまないという気持ちから
自分の意志で来てたんだ・・・・・・・ただ・・・いや」

??えッ「えッ、最後のいやは何?」
「・・・・・・・・・・そうだな最後だモンな・・・・・・・俺は琴が好きだ、プロポーズしようと
思った事もあった、でも奴の面影が俺と琴にまとわりついてくる・・・・・だから今日で琴とも最後だ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・私は何も言えませんでした
わかっていました・・・でもやっぱり貴方の影が二人にちらつくでしょう

「うん・・・・寂しいけどそれが良いと思う・・・ありがとう・・今までありがとう」
私はまた涙が出てきました
私は川に向かって「ごめんね、私も今日が最後ですもうここには来ません・・・・
気づかなくて、気づいてあげられなくてごめんなさい」
私は深深と頭を下げて、そして空を見て「いつかは皆、一緒だね!」
涙が頬を流れた


アイツとは真室川の駅前で別れた
私は「ありがとう、元気でね」
そして手を差し伸べて・・・・
アイツは私の手を軽く弾いて「幸せになれよ」そう言って
ヘルメットをかぶりバイクにまたがり私の方を見ることなく走り去った

残された私はあの頃の貴方・・・・真室川の駅前での出来事を思い出していた


貴方はこう言ったの・・・・・





「琴、お前が好きだ」



完結。


最後まで読んでくれてありがとうございました。

by 琴。


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